
大濠公園日本庭園は、福岡県が大濠公園の開設50年を記念して築庭し、昭和59年に開園したものであります。この庭園は、日本庭園の伝統的な庭園技法による古典美を基調とし、それに近代性を盛り込んで作庭された築山林泉廻遊式の庭園であります。面積は12,000平方メートルで、白壁の築地塀と樹林に囲まれた園内には、大池と築山の大池泉庭、曲水の流れ、枯山水庭、数寄屋造りの茶室と露地庭などが配置され、これらをつなぐ園路によって廻遊するようになっています。
主景の大池泉庭は、前庭を左に折れて南に進んだ所にあり、中央に大池を掘って中島を浮かべ、これを囲むように築山を東・南・西の三方に築いています。築山はうつ蒼とした森とし、その中に大小の滝を落として、深山遊谷を表しています。南面中央にかかる三段落ちの大滝は、高い峰から流れ落ちる瀑布を表しており、その豪壮な眺めは、周囲の松・サツキなどの植裁と共に、この庭園の重要な景観となっています。
南と東の築山の間を落ちる渓流の滝は、谷間の美しい流れを再現しています。また、東の築山の北端に落ちる滝は、布落ちの滝といわれ、格調のある姿と滝下にある渓流が美しく、滝囲いの楓が滝の景色に奥深さと彩りを添えています。中央の大池は大海を表し、その中に不老長寿、永劫の繁栄を意味する蓬莱・方丈・瀛州の神仙三島を浮かべています。
池の東岸は玉石を敷きつめて、荒磯の海岸を表し、西岸は低く刈り込んだ松を一面に配植して青松の浜とし、優雅な自然の海景を再現しています。池泉を廻る園路は、随所に飛石・石段・石橋や木橋などを設けて変化をもたせ、両側には景石や松・サツキなどを配して、散策を楽しくしています。また、東と西の築山には、林間の園路をつくり、憩いと鑑賞のための四阿を設けています。
大池の北西隅からは渓流となり、細長い林の中を二條に分かれ、一つは激しく、一つは緩やかに 流れ下って小池に注いでいます。この流れは、王朝時代の曲水庭を基調に作庭されており、せせらぎに耳を傾けながら静かに散策するところであります。
小池の西側には、築地塀を背景とした枯山水庭があります。前面の白砂は大海を、また背後の石組は遠山を表しています。小池の東側は、築地塀沿いに芝生を植え、その中にサツキの大刈込みを配して、緑の明るい庭としています。サツキの大 刈込みは大海の波紋を表しており、その背後には洋々とした大濠公園が広がり、壮大な水と緑の景色を眺めることができます。
この庭園には、県産の黒松・サツキ・ツツジをはじめ、40数種類の樹木と25,000株に及ぶ下草類が配植され、春から初夏にかけての新緑とサツキ・ツツジの紅白の花、夏の深緑と秋の紅葉、冬の松の緑など、四季折々に変わる風情を楽しむことができます。
茶室は大池の北側に建てられ、伝統的な茶事ができる草庵風の茶室棟、大寄せの茶会などを行う茶会館棟および椅子席の立礼棟をL字型に配置し、その外観は矧?ョ造りとして、庭園の景観との調和を図っています。茶会館の前庭は、茶室に通ずる外露地で、西側は高い生垣とし、地表には杉苔を張り、その中には自然石の飛石と蹲踞や灯籠を配して、侘びの雰囲気をつくっています。
桧皮葺の中門から茶室に通ずる内露地は、高い樹林と竹垣に囲まれ、苔庭には飛石・蹲踞・灯籠を配し、また腰掛待合、猿戸などの伝統的な形式を整え、幽玄で静寂な世界をつくっています。
この日本庭園は、開園以来県民のよき憩いと鑑賞の場として、また本格的な茶会や文化的な集いに幅広く利用されています。